新しいターゲット
IC タグとあなたのプライバシー
作者: Mary O. Foley
意識することはあまりないでしょうが、現在の便利な生活のうちいくつかの分野は、小さいコンピュータチップによってもたらされたものです。たとえば、自動車の中に、有料道路などの料金所を通過するときに、通行料金を自動的に支払う装置 (ETC) を搭載している人も少なくないと思います。これは、コンピュータチップを活用して実現されています。また、オフィスのビルに出入りするときに、セキュリティカードを使用することがあります。これも、コンピュータチップを活用して実現されています。
このようなコンピュータチップの多くは、買い物、クレジットカード番号、さらには個人情報に関する情報を交換しています。これらの特別なチップは、IC タグ (RFID: 無線周波数 ID) と呼ばれる種類の半導体チップです。これらのチップは、特別なアンテナ、つまり「リーダー」 (読み取り装置) に向かって無線信号の形でデータを送信します。データはリーダーからコンピュータのデータベースに送信されます。
財布や自動車の中に、IC タグが組み込まれたアイテムが増えてきましたが、近いうちに店舗で購入するさまざまな商品にも張り付けられる可能性があります。IC タグは、プリペイドカードやガソリンスタンドの給油会員用クレジットカード、公共機関の定期券などの支払いシステムで使用される頻度が高くなっています。プリペイドカードをリーダーに通す手間が省けるので、多くの人はこのような利便性を好意的に受け入れています。代わりに、IC タグを組み込んだカードをスキャナにかざすか、軽くタッチするだけで済みます。加えて、2006 年以降、米国のパスポートにはパスポート所有者のデジタル画像を記録した RFID チップが組み込まれるようになりました (日本も顔写真を記録した IC パスポートを 2006 年から発行)。米国の一部の州では、運転免許証でもこの機能を採用することを義務付けています (日本では、2007 年から一部の都県で IC チップの内蔵を開始しました)。
チップの小型化 (小さいものは、米粒と同程度のサイズ) と低価格化を受けて、Procter & Gamble 社、General Motors 社などの企業は、店頭で販売される自社製品にチップを内蔵する実験を開始しました。専門家は、近い将来、スーパーマーケットへ行き、IC タグを張り付けた商品を買い物かごに入れるだけで、レジに並ぶことなく買い物が完了すると予測しています。集合アンテナのそばを歩いて通過するだけで、商品の価格は自動的に勘定され、IC タグ内蔵のクレジットカードに対して請求が行われます。
利便性とセキュリティ
IC タグの RFID 技術を使用することにより、通勤やショッピングが便利になりますが、一方で、他人があなたについて必要以上の情報を収集できることになります。目に見えない形でこれらのチップをスキャンできる事実、およびプライベートなデータを大量にチップに保存できるという事実は、悪意ある人間の手に個人情報が渡るのではないか、という懸念を生んでいます。プライバシーを非常に気にする一部の人は、この技術を「スパイチップ」と呼んで見下し、誰でも IC タグのリーダーを手にして適切な場所に立つと、個人情報窃盗から政府官公庁による監視まで、あらゆる理由でデータを盗み出すことができると主張しています。
米国の、市民の自由を主張する非営利団体である Center for Democracy and Technology (CDT、民主主義および技術センター) の副理事長、Ari Schwartz (アリ・シュワルツ) 氏は、「個人と社会に対する脅威である」と論じています。家庭内暴力 (DV) の被害者や法執行機関の職員など、ストーキングのリスクにさらされる人々が最も脆弱な存在になる可能性がある、と語ります。時間の経過とともに、この技術を使用することは、社会にとって米国市民の自由を犠牲にする可能性がある、という主張です。「私たちは、『マイノリティ・リポート』に似た世界で暮らしていることに気づくようになります。」と、政府による市民の監視がゆがんだ方向に進んだ社会を描いた 2002 年公開の映画を引き合いに警告しています。
一方、RFID 技術の支持者は、あらゆる新技術は誹謗中傷に直面してきたという事実を指摘します。『RFID Journal (RFID ジャーナル)』誌の編集者である Mark Roberti (マーク・ロバーティ) 氏は、「これらの議論の多くは、バーコードが導入されたときに主張されたのと同じものです」と語ります。「RFID トランスポンダー (IC タグ付きのカードを挿入して信号を送受信する小型装置) を自分の身体や自動車に装着している人が、米国だけでも 1 日 3,000 万人から 4,000 万人はいますが、それらの人々のプライバシーが侵害されたという例は 1 つもありません。」と同氏は主張します。
さらに、電源を持たず、盗聴できる範囲が 1 メートル前後の IC タグより、電源を内蔵し、数 km の範囲にわたって追跡できる携帯電話の方が盗聴される可能性が高いと指摘する IT セキュリティ専門家もいます。
IC タグに対処する方法
IC タグはますます普及する可能性が高いので、私たちはそのリスクに注意を払う必要があります。追跡者をかわしたいと考える場合は、Roberti 氏が次のようなヒントを提示しています。
CDT の Schwartz 氏は、GM のようないくつかの企業が、消費者の不安に対処するために、IC タグを無効化または取り除くための方法を記したマニュアルや製品ラベルを用意するために情報を準備している、と付け加えます。Schwartz 氏はこのように語ります。「これは、消費者を保護する観点で、進歩だと捉えています。」
大半の専門家は、道路料金の精算、支払いシステム、個人識別などの目的で現時点で IC タグを使用しても、消費者にとってただちに発生する直接的なリスクはほとんどないと語っています。事実、利便性の面で良い点がいくつかあるといえます。ただし、消費者がこの新技術の進展に注意を払うのは良いことであり、そうすれば自らを十分に保護することができます。
Mary O. Foley は、米国ワシントン DC 圏を拠点とするビジネスジャーナリストです。IncTechnology.com に最近書いた記事が掲載されています (英語)。
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